ヤスリのわかり難い所をまとめ

切削の手工具

誰もが使うヤスリですが
わかり難いところが結構あるのでまとめました。

鉄工ヤスリと組ヤスリに限って話をすすめます。

鉄工ヤスリ

100mm~400mmで、柄のついていないやつで、
焼き入れの影響で大抵は反ってます。

荒目、中目(並目)、細目、油目があります。(鬼目もありますが木工向き)
その目数はわかり難いことに、同じ目でもヤスリの長さで目数が変わります。
目数とは目(刃)の密度です。
例えば長さ400mmの細目は100mmの荒目と同じ36本/25mmです!
だから、大きなヤスリで細かいところを同じ調子で掛けると削りすぎてしまいます。
ヤスリの長さは刃の長さではなく、柄を含めた全長なので更にアバウトです。

長さで目数が変わる理由
基本的に被削部分が長いとヤスリも長いものを使います。
このとき、ヤスリと接する長さが長くなるので、目の密度を変えないと1目あたりに加わる力は減ってしまいます。
あまり削れなくなるわけです。
ヤスリの長さが変わっても、同じ目は同じ削れ方にしたいので
長くなるにしたがって目数を減らしているわけです。

そして、目に対する目数(cuts)はJIS(日本工業規格)で規定されています。
そのためか大抵の商品に目数が書かれていません。

目数は基本的に25mmあたりの本数で表します。(1インチ=25.4mmが由来かな?)
ちなみにツボサンは1cmあたりの本数で表しています。

 

組ヤスリ

5,8,10,12本組の大分類があります。
基本的には平、丸、半丸などが組み合わせ1セットとなっています。
なんと、この何本組という呼び方はセットの本数の話だけでなく、ヤスリのサイズも違っていて
5本組から12本組まで、だんだん細くなっていきます。
この何本組という呼び方はJISで規定されています。(センスが疑問です。)
セットでなく、単品販売や平だけの5本といった販売もあるので
気の利いた販売サイトは5本型などとあえて間違った表記をしています。
5本組 平 中目とか書かれていたら5本セットだと思うのが普通ですが、本数を確認する必要があります。

組ヤスリの目数も鉄工ヤスリと同様の理由でJISに規定されていますが、
こちらは長さではなく、本組で決まっています。
本組が増えるほど目数は多く(細かく)、やすり本体も小さくなります。
12本組油目が最も細かく、ツボサンだと50cuts/cmとなります。
でも、幅は5本組の1/3程度になります。

安いヤスリはJISに従っていないものがあって、平、丸などの型によってバラバラだったりします。

 

鉄工ヤスリ、組ヤスリに共通する複目、単目

目の種類は複目、単目があります。
よく目にするのが複目で上目と下目がクロスして、ラフィングエンドミルの様に切粉を分断しています。
単目は上目だけで、綺麗な面を作りやすいと言われています。
ちなみに目数は上目を数えています。
下目の本数は上目の80~90%とJISにあります。

 

ここからは個人的に

★少しくらい反ってた方が面が出しやすい。
もっとも反りの有無に関わらず、大抵の平ヤスリは先端から少し下がった所でテーパーが変化している(張り出している)ので
面内で部分的に落としたい所ではそこを使う。

★ビビらない机
万力を付けた机ごとビビりまくります。
騒音で気が引けるし、うまくかけられません。
荒目を思いきり掛けてもOKな机は大きさ的に難しそうなので
作業者の自重を利用した万力専用台を作成予定です。(アングル溶接かな)
自分の腕の方のビビりはどうにもならない…。

ところで、切削油を使うとビビリが抑えられ、切削面もきれいになります。
切削油はつけない派でしたが、今では必ず使っています。

★値段のするヤスリはやっぱり問題が少ない。
安いからとモノタロウの組ヤスリ細目で失敗しました。
5本とも粗さがバラバラだし、潰れている所があるかと思えば、バリもそこかしこにあって結局返金。

でも半丸だけは感じがよく、ちゃんと細目で、平面は単目で丸側に少し反っていました。
そのあたりが使いやすそうだったので、半丸だけのを注文し直しました。

モノタロウブランドは問題があれば、使用済みであっても1年は補償してくれます。
なので買ってみる気になるわけなのです。

しかし、届いたものはなぜか複目。
全体的な感じも別商品でした。(目も細目のはずが中目くらい。)
5本で2000円程度のものはこんなものかということで諦めてどうでもいい所に使ってます。

その点、ツボサンあたりはグラインダーを使って落とさなければならないようなバリはありませんし、刃が潰されているところもありません。
追記
ツボサンでもバリは大抵の角にありますが、ダイヤモンドやすりでさらっておくレベルです。
安いのはグラインダーで成形するレベルのバリだから袋も最初から破けてる。

ちなみに、モノタロウのダイヤルゲージ、マイクロメーター25mm,50mm、
デジタルノギス、エンドミル、ボルト/ナットなどを使っていますが全く問題なく、
返金はこれがはじめてでした。
もし、最初の購入がやすりだったら、これらの製品も買わなかったかもしれません…。

★ダイソーの三角&丸のセット(柄が水色と黄色のゴムのやつ。)
小さいですが、そこそこ切れて、意外に長持ち。
ただ、ダイソーは商品をチョコチョコと入れ替えるので、同じ商品はもうないかも。
再度見つけて、あるだけ大人買いしました。(といっても400円)
あと、ダイヤモンドやすりになりますが、半丸の大きめのも良かったです。(粒は不ぞろいですけど)

 

★ツボサン クイックカットエクストリーム EX02 (中目/油目) 型式 QHIEX02
切れの良いクイックカットシリーズで、片面が中目、もう一方が油目と一石二鳥のヤスリです。
刃が電解処理されていて切れが良く、
そのわりに深い傷を残さないので細目を飛ばして油目で綺麗になります。
どちらも複目ですが、切粉の処理がいいので単目よりきれいに仕上がる印象です。
「何か一本だけを選んで」と言われたら迷わずこれをおすすめします。
私のは反りがありませんでしたが、万が一、反ってたら返品しましょう。(片面だけでは機能しない商品なので)
そうなると返品が早いのがAmazonです。

切れの良さを謳ったクイックカットには種類があります。Amazonで売ってるクイックカット

★鉄工やすりはヤフオク
たまに安く沢山出回ります。
「〇本まとめて」とか見ては飛びついてました。
三角の中目、四角の荒目 300mmをよく使っています。(重いです)
油をひいて保管して、使うものだけメタルクリーナーで脱脂してます。

★ツボサンじゃなきゃダメ?
ツボサン 鉄工ヤスリ 平 中目 250mm 複目をモノタロウで買いましたが、
ツボサンらしさ?は特に感じませんでした。

やっぱりツボサンはブライトやクイックカットがいいと思います。

★単目
ツボサン 細目 単目 200mm、と5本組 単目を使っています。
単目はたしかに綺麗な仕上がりですが、ブラシ掛けが頻繁に必要です。
切粉に乗り上げて斜めに当たりやすいようで、角の周辺を落としてます。(涙をのんで広めに)
5本組の片面は仕上げ用としてヤスリ面全面をダイヤモンドやすりで均してます。
(他の用途でしばらく使って掛かりが悪くなってからにすると経済的。)

ちなみに油目の単目は見たことがありません。(ありました)
ツボサンでもにはラインナップにありませんでした。
切粉の詰まり(乗り上げ)の影響から?

 

★油目も買いましょう
油目を使うと劇的に仕上がります。
中目→粗目→細目→油目と時間とともに本(丁)数を増やしていきましたが、
もっと早く持っておくべきでした。

★やすりの材質
高炭素クロム軸受鋼(ベアリング鋼) GCr とか SUJ というのが使われていることが多いそうです。
耐熱性が不要なのでHSS(ハイス)ではないのですが、同程度の硬さがあります。
なお、焼きの入った鋼もかなり硬いので、ダイヤモンドやすりを使う必要があります。
ダイヤモンドからすれば焼きが入っていようが、赤子の手をひねるようなものです。

★ダイヤモンドヤスリ (ついでに)
最強ですが、鉄工ヤスリほど一気に削れません。
電着メッキという方法で地金(台金)にダイヤ粒が着けてあります。
力を入れるとダイヤが剥がれるので
油をつけてメッキ部分を守り、力を入れずに手数で勝負です。

 

ヤスリの掛け方 おすすめの本

ザ・手仕上げ作業

精密機械部品の仕上げのための本です。
書面の半分がヤスリ掛けとなっています。
基本から書いてあります。

知っていて損はありません。(その手の職種でない限り実践することはあまりなさそうですが。)

私は制御屋として、機械メーカーにいくつか勤めていたことがありました。
でも残念ながら、これをやっているのは見たことがありません。
そこまでの精度が不要だったのがほとんどですが、
金型とかは買っていたし、必要でも調整機構や買い物で避けていたのだと思います。

お!と思った所
鉄工ヤスリの長さと目数のグラフ

おお!と思った所
鉄工やすりの反りを卓上グラインダーを使った熱歪みで修正する方法。(難しそう)

 

手仕上げのベテラン

相当古い本です。
あえてざっくり言えば、こちらの方が一般的な機械向けです。
ヤスリ掛けに関してはそれほどの量は割いていませんが
表紙も中身の写真も鋳鉄の黒鉛臭がしてきそうな、時代も感じさせる興味深い本です。
ベアリングの嵌め方とかも載ってます。

 

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