クローズド ステッピングモーター

脱調しても復帰してくれる安心感

X-1 CNC化で使用しました。

Lichuan社のものとLeadshine社のものを使ってみました。

X、Y軸
モーター Leadshine Nema23 2Nm Hybrid Servo Closed Loop Stepper Motor 573HBM20-1000
ドライバHBS507 (中国向け)
ドライバの名前が中国向けと海外向けで違います。ES-D508 (グローバル向け)
ややこしいです。

Z軸
モーター LiCHUAN LC57H380
ドライバLCDA357H
いずれも中華プロダクト(設計から中国の製品)でebayで買いました。
モーターとドライバが1セットおよそ1万~1.3万円ということで、(変動あり)
普通のステッピングモーターの3倍くらいしますが安心感を買いました。
どちらも2Nmで卓上フライスには十分な力が出せます。

 

ebayやAliexpressではclosed loop stepper motor, easy servo driveなどと呼ばれて売られています。
メーカーによっては更にhybridというキーワードをつけています。

基本構造はステッピングモーターです。
エンコーダを内蔵することでサーボモーターのように位置を補正してくれます。

利点は2つあります。
1.脱調からの復帰
2.ズレがなければ励磁電流を減少してくれるのでモーターが過熱しにくい。
モーターの過熱は脱調の原因にもなる。

 

具体的には
1000ラインのエンコーダが位置をひろい、
DSP(デジタルシグナルプロセッサー)チップでパルスを出力しています。
平均電流を制御するため、PID制御で電流パルスの間隔をコントロールしているようです。
(励磁するとモーターからジジジーという音が聞こえます。)
一周あたりの指示パルス数の設定は最大51200パルスまで可能です。

あれ? エンコーダは1000ラインなのになぜ一周あたりの指示パルス数がそれを超えているんだ?
それじゃ脱調を検出しきれないじゃないか?
とお思いかもしれません。

その答えはマイクロステップで
ステッピングモーターの構造と関係があります。
磁気的に一番安定したピッチがフルステップで、
そこから各相の電流配分を変えることでステップ間に中間位置(マイクロステップ)を作り出しています。
この電流配分を細かく制御できれば理論上は超高分解能にできます。
で、脱調はフルステップ単位で起こるので
フルステップよりもエンコーダ分解能が高ければ良いわけです。(+余裕分)

マイクロステップは大抵のオープンループのステッピングドライバで採用されているので
もっとわかりやすい説明はそちらに譲ります…。

私の環境では指示パルスを計算して出力する側の処理が全然追いつかず、
最大速度が使い物になりませんでした。
なので1600 pulse/round(ppr)程度で使っています。

1600 pprでは0.1mmずつ移動させると数回に一度、周期的にハンチングすることがありました。
それ以上のpprでは発生しませんでした。
エンコーダの位相と関係していそうです。(うなりのように)
音がするだけで、動きでの影響はありませんでした。

 

両社ともRS232cの通信ポートがあって、専用ツールで設定を変えられます。
Lichuanではdebug softwareと呼んでいる設定用の基板で
リアルタイムに総パルス数や、速度、位置偏差をモニタ、各種パラメータを設定できます。
しかし、現在は販売を中止しているようです。

位置偏差をモニタしましたが、
結構負荷がかかっていてもせいぜい1カウント分のズレしかありませんでした。
それもエンコーダ分解能の割り切れない分かと思われます。

特に問題も無いことから、このツールで設定を変えることは一度もありませんでした。
ただ、パルスカウンター機能は便利で、ノイズを受けていないかを確認できました。
Lichuanでは1周あたりのパルス数設定をドライバのディップスイッチで行えるので
メーカーはこのツールの再販を重要視していないのかもしれません。

旋盤もNC化しようと思って最近もう一台購入したら、
今度はD-SUB9pin⇔モジュラージャックのRS232Cケーブルが付属してきました。
そのうちプログラムが提供されるかもしれません。

 

LeadshineではホームページでWindows用ソフトProTuner-CS-V3.1を公開しています。(サーバーがめちゃくちゃ重い。)
このツールはすでにWindows8からは搭載されなくなったdotnet 3.5のインストールを要求してきます。
さらに、私の環境ではモニター機能を使うとソフトが落ちます。
設定値変更はこのバージョンでは試していません。(ROMを読むことはできました。)
古いバージョンのものがネットに落ちているのを見つけ、
テスト動作での速度、位置偏差を確認できました。
なお、Leadshine ES-D508は1周あたりの指示パルス数を設定するのにこのツールが必須です。
ES-D808, ES-D1008はディップスイッチで指示パルスを設定できます。
— 注意事項 —
ツールのバージョンによっては、パルス数に関するパラメータだげを
パラメータ画面以外でも変更できるようになっているのですが
そこで設定変更したら、メニューにあるDownload to Driverボタンを押さないと電源再投入で前の設定に戻ってしまいます。
たぶんRAMからEEPROMに書き込みをするのがDownload to Driverなのでしょう。
私は何度かコレにやられました。
ちなみに、パラメータ画面の方にはDownload to Driverボタンがあるので忘れずに押せます。

 

そんなわけで、両社ともツールのサポートがいまいちですが
パルス数設定のディップスイッチを本体にもつLichuanの方が安心と感じました。

最近Lichuanをもう一台購入したところ(旋盤CNC化のために)
それには232Cケーブルが付属していたので、そのうちにLichuanでもプログラムが提供されるのかもしれません。

また、Lichuanはaliexpressに自前のストアを開いています。
配送上の理由でチャットでのやり取りをしましたが、親身にやりとりしてくれて良い印象です。
まちがって郵便を選択してたらFedexでも同じ金額だよと教えてくれたり、
取説をメールで送ってくれたりとまめにやってくれます。
うちは関東でやや田舎ですがFedexで5日で来ました。(リモートエリアではありません。)
何より、直販なので割安です。

ついでなので書いてしまうと、
値段的に2個を一度に注文すると関税を払わないといけなくなります。
1個ずつ期間をずらして注文するのがベストです。(送料込みで16,666円がしきい値だとか)

その後、少しやり取りしたのですが、プログラムをメールで送ってくれるとのことでメルアドを教えると
代わりに送られてきたのは直接やり取りの場合の値段リストでした。
プログラム提供の話を尋ねると音信不通になってしまいました。
なんだろな…。

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2phase と 3phase(相) のシリーズがあり、
一般に2相の方が安いのですが電源効率が悪いので3相にしました。
2相のドライバには放熱板が付いていますが、3相の方にはありません。
実際、ドライバが熱をもつことはありませんでした。

DC 18~50Vを電源として必要とします。
パワーサプライは電圧可変のものが安心です。
問題ない範囲で下げたほうが、発熱しにくいので22V付近で使用しています。
その後、パワー不足でエラーが出ることがあったので36Vに変更。

オリエンタルモーターでαステップというシステムが売られていて
相当前に仕事で使ったことがあります。
位置検出の方法が異なりますが、安心して使えたことを覚えています。
それもあってこのシステムを選びました。(中華プロダクトの不安はありましたが)
結果的には良かったと思います。
ちなみにαステップはお値段が4倍位します。

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2019/06/10
CNCフライスのX軸Y軸に使っていたLeadshine社のモーターとドライバをLichuanのものに交換したら
ハンチング音はほとんど出なくなりました。
Leadshineのは卓上旋盤CNC化で使うことにしました。

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2019/06/14
Lichuanのドライバ
電源投入時に過電流のエラーが出ました。
電源再投入で問題なく動きました。

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One thought on “クローズド ステッピングモーター

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